セックスワーカーを肯定的に描く時代へ——映画・ドラマで見えてきた“意識の進化”
【注目】アカデミー賞5冠作品「ANORA」や映画「うぉっしゅ」が描く、ポジティブなセックスワークの姿とは?
かつて「搾取の象徴」として描かれがちだったセックスワーカー。しかし今、世界中の映画やドラマで、彼女たち・彼らを**「自立した働き手」=ワーカー**として尊重する描写が広がっています。
この記事では、アカデミー賞受賞作品『ANORA』や、5月公開予定の日本映画『うぉっしゅ』などを通して、セックスワークを前向きに描くメディア表現の変化を深掘りしていきます。
セックスワーカーとは?──定義と背景の再確認
「セックスワーカー(Sex Worker)」とは、性的なサービスや表現を提供する職業に従事する人々を指します。いわゆる風俗業、AV業界、ストリップダンサー、セクシー動画配信者などが該当します。
この言葉を初めて提唱したのは、アメリカの芸術家・活動家であるキャロル・リー。1979年に「性を提供することも“労働”である」という観点から、「ワーカー」という呼称を用いることで、当事者の主体性や尊厳に焦点を当てました。
ドラマで見る「セックスワーク肯定」の描写の進化
■ 米ドラマ「グッドドクター」:偏見なき視点で尊重する
シーズン7では、セクシー動画で高収入を得る女性が父の医療費を支払う姿が描かれます。当初、娘の仕事に拒否反応を示す父親に対し、主人公のショーン(サヴァン症候群の外科医)が「誇れる職業だ」と語るシーンは、現代的な価値観を象徴しています。
■ 「ルーキー」ではコールガールとの自然な対話が
女性警官が、署内で出くわしたセックスワーカーと気さくに言葉を交わすシーンは、もはや「犯罪者」としてではなく、社会の一員として認知されている様子を示しています。
セックスワークは「当たり前の職業」へ
1971年の映画『コールガール』では、主人公がやむなく暗い世界に身を置く設定でした。しかし1990年の『プリティ・ウーマン』、そして2024年のアカデミー賞で大きく潮目が変わります。
■ 2024年アカデミー賞5冠『ANORA』の衝撃
ニューヨークでストリップダンサーとして働く主人公が、恋や困難に立ち向かう物語。主演女優マイキー・マディソンは受賞スピーチでこう語りました。
「セックスワーカーのコミュニティーをたたえたい。彼女たちから多くを学んだ」
この言葉に、世界中がハッとさせられました。
日本でも…ソープ嬢と介護の“二足のわらじ”映画「うぉっしゅ」
5月に公開される映画『うぉっしゅ』では、ソープ嬢として働く若い女性が、祖母の介護に奮闘する日常を描きます。
主演は中尾有伽さん。彼女は本作について、こう語ります。
「最初は重いテーマだと思ったけれど、台本を読んだら明るくてポップな作品に感じました。ソープ嬢役への抵抗は特にありませんでした」
役作りにおいては、俳優とソープ嬢の共通点「“演じる”ことで相手を喜ばせる」という視点で、自分の中の理解を深めたそうです。
■ 祖母役の研ナオコさんからのセリフが人生を変える
劇中、認知症の祖母から何気なく発せられる言葉が、主人公の心を癒し、自己肯定感を高めていきます。
「仕事は大切な生きる糧なのよ」
これは、主人公だけでなく、中尾さん本人にとっても深く刺さるセリフだったとのこと。
法的規制と搾取のリアル──だからこそ「仕事」として認知を
日本やアメリカなど、多くの国では、セックスワークはグレーゾーンまたは違法とされている領域があります。
しかしながら、「違法」にすることが、逆に地下化・搾取の温床となり、安全や人権の保証から遠ざけてしまうという現実も。
オランダでは2000年に売春を合法化し、人身売買や犯罪との関係が減少しているというデータもあります。
NHK大河ドラマ「べらぼう」も転換の象徴
現在放送中の『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は、江戸吉原を舞台にした作品。搾取や貧困という闇の部分に正面から向き合いながら、当時の文化的拠点としての吉原の姿をリスペクトするバランスのとれた描写が話題です。
まとめ:セックスワーカーを「ただの人」として描く時代へ
セックスワークに対する偏見が残る一方で、メディアでは確実に変化が起きています。
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従来の「被害者」「堕落者」というイメージからの脱却
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労働者としての主体性や、誇りある描写
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周囲との関係性や共感による物語の深化
こうした新たなアプローチが、未来の価値観を形作っていくことは間違いないでしょう。
あなたはどう思いますか?
セックスワーカーを描く映画やドラマを見たことがありますか?あなたの中でのイメージはどう変わりましたか?
ぜひコメント欄でご意見をお聞かせください。
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